ちさのの日常的思考

ふだん思ったこと何でも書いてるブログ。真面目なことから馬鹿らしいことまでやってます。「今回の記事も相変わらずだな!」くらいの気持ちで読んでくれると嬉しいです。

佐藤健太郎先生の「世界史を変えた薬」を読み終えたので出会いと感想を述べてみる

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先日、佐藤健太郎先生の「世界史を変えた薬」を読み終えました。写真の本です。なぜ先生の本が謎の生物(とはいえハムスターとスーモ)に取り囲まれているのかとかいうことは置いておいてほしい。我が家のシンボルたちです。

冒頭から「先生」としきりに呼んでいる、この本の著者の佐藤健太郎先生。会ったこともないし直接の関係も特にない。しかし一方的に勝手に先生と呼ばせて頂いている。Twitterだってフォローしている。何を隠そう、今回、私がこの本を知り、購入して読むに至ったのは先生のアカウントをフォローしていたからである。ではなぜ私が先生を知り、Twitterをフォローするに至ったのかという話をこの際だからしようと思う。

……ちなみにこの記事は前半がこの話で後半から私の今回の読書感想になります。前半はすっ飛ばしても問題ありません。

 

先生との出会い

さて、私と先生の出会い(出会っていない)は10年ほど前までさかのぼる。ちさのは中学生、ちさの兄は高校生だったころのような気がする。なんだったかよく覚えていないが、ちさの兄妹はこんなwebページに出会ってしまった。

 

有機化学美術館/ナノ世界の小人たち
http://www.org-chem.org/yuuki/nanoputian/nanoputian.html

 

ちさの兄妹は爆笑だった。

中学生の私にはよくわからないけれども何かもう爆笑だった。化学の話という感覚で眺めていたwebサイトに突然マスコットキャラクターみたいなものが現れたから爆笑だったのかもしれない。本当によく覚えていないが私の中に「NanoPutian」、特に「NanoKid」という存在だけは強烈に印象づいている。画像をDLしてケータイの待ち受け画像にしていた時代さえあった(それを見た友人たちはもちろん引いていた)。

 

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(NanoKid。引用元:有機化学美術館/ナノ世界の小人たち http://www.org-chem.org/yuuki/nanoputian/nanoputian.html )

 

このwebサイトを見て爆笑したちさのであるが、当時ちさのは中学生である。ベンゼンは知らないし構造式という概念さえない。炭素鎖をジグザグで書いて水素は省略するなんてもちろん知らない。しかし隣にいた高校生のちさの兄は知っているのである。そして興奮気味に何かを説明した。正直よくわからなかったがその説明の最後に兄は確かこう言った。「高校に行ったらこれ勉強するから!」と。兄は昔からこうだった。私がまだ知らない学校で学んだ面白いこと、特に理科や数学に関してのことを面白そうに私に語ってみせる。このときもそうだった。

そして数年後、高校に進学して化学の授業で私はベンゼンと出会うことになる。

 

「ナノキッドにはまってたやつだぁぁぁぁああああ!!!!!」

 

これが、初めて授業にベンゼンが現れたときの心の中のテンションだった(ような気がする)。さすがに授業中に叫んではいない。この後、修学旅行の班名を「ナノキッド」にして担任の先生の頭上に「?」が浮かんだというエピソードもある。このころのケータイの待ち受けは確か「Nanoputian Dimer」だった、二匹がかわいい。

 

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(Nanoputian Dimer。引用元:有機化学美術館/ナノ世界の小人たち http://www.org-chem.org/yuuki/nanoputian/nanoputian.html )

 

ちなみにこの「NanoPutian」で盛り上がったちさの兄妹は、立派な化学系兄妹(!?)へと進化を遂げる。ちさの兄は某素数大好きで有名、理系大学の化学系D(現役で学生)だし、兄と比べるとハンパなく見劣りするが、ちさのはとある私大の化学科卒である。
私が化学専攻になった原因の半分以上はきっと兄にある。大学進学後に高校生の私に大学の化学を嬉々として語った兄にある。それでも私が化学に興味を持ったエピソードの1つに「NanoPutian」を見てパソコンの前で兄と爆笑したあの日の思い出は確かにあり、私が俗に言う「リケジョ」になったきっかけの一端はきっと佐藤健太郎先生にあるのだと思う。だから何らかのきっかけで先生のTwitterを見かけたときに「あ、あの有機化学美術館の中の人だ!!」と思ってフォローを始め、そして今回の「世界史を変えた薬」の購入に繋がったのである。

 

真面目に感想

冒頭に書いたとおり、後半は真面目に読書感想の話をしよう。

なにより、読み物として面白い。化学という枠組みの外側の内容が面白い。こんな言い方をしてもピンとこないとは思うが、真っ先に思った言葉がこれだった。

タイトルが「世界史を変えた薬」。世の中にはどんな薬があってその薬はどんな症状に効いて体内ではどう働いて……、みたいな話だと思うのではないかと思う。ちさのはそう思っていた。主人公は薬な、知識を与えてくれる教科書みたいな本だと思っていた。

それでも全然よかったけれど、そうではなかった。というか、それだけには留まらなかった。もちろん登場する薬についてどんな薬でどう働くのかと言う話もある、ちゃんとある。それ以上に、その薬を取り巻く人々、その薬の研究者たちや患者たち、そのときの世間の人々(つまり世の中の状況)など、この本の主人公は「薬」ではなく「薬を取り巻く人々」だと思う。それぞれの薬に関するエピソードが面白い。こういう意味で、教科書というよりも物語としてという意味で、「読み物として面白い」だ。

各薬のエピソードもとても面白いが、さらに印象的なのが、ところどころに散りばめられた「化学の枠組みを超えた投げかけ」だ。これがまたたまらなかった。なんていうかもう、ため息がでる。各章末にその章で扱った薬やそのエピソードから、化学の範囲の外側について考えさせられる文章があったりする。私の拙い言葉では全然伝えれれないので、一文だけ引用させて頂こう。

「第5章 麻酔薬 痛みとの果てしなき闘い」の最後の段落中(p.87)の一文。麻酔というものは身近に用いられていながら、その原理がわかっていないという話のあとにある文章。

 

「あるいは麻酔の研究こそが、人の心や意識という、最大の謎に対する鍵を提供してくれることもありえよう。」

 

この化学という枠組みを超えた広大さが伝わるだろうか…!?伝わらなくてもいい。一端でも何か伝わればいい。私はため息が出た。私は出たぞ、ため息が。

いやぁ、漫画やアニメとかの理系キャラのイメージから、「そんなのわかりきってる、当然だ」みたいなことをスカした顔で言うのが理系だと思われているような気がするが、そうではないと叫びたい。世の中わからないものだらけなのが当然でだとわかったうえで、とても広大なわからないものに出会ったときこの世界の広さと神秘さ、そして世界から見た人間の小ささを感じ、その神秘さに心満たされながら喜んでそのわからないものに飛び込んでいきたくなるのが真の理系だと叫びたい。話の本筋からズレてはいるが叫びたい。発言が宗教ちっくなのを承知のうえで叫びたい。キモイと言われても構わない。なにせ実際キモイ。

 

……えっと、ゴホン。

この本の投げかけは、そんな理系の興奮を掻き立てるものがある。「知識が増える」ではなく、いろんな方面から「心が動く」ものがある。本記事の前半も踏まえて言うなら、

 

「やはり先生は、私を化学の世界に惹きつける御方なのだなぁ(*´ω`*)」

 

といったところだろうか。

これ以上この記事を続けたら、もしも佐藤健太郎先生ご本人の目に触れることがあったときにドン引きされそうなので、この辺にしておこう。見ず知らずの女にラブコール(?)されたら普通引くだろう。ましてちさのだし。もし先生がこれをご覧になっていたとしたら、これは読者からの敬愛だと解釈してもらえると信じていよう。

さて、この記事をご覧になった方の中に、もしここの本に多少でも興味をもった方がいたとしたら、読んでみることをお勧めしたい。きっとちさのはこの本の魅力の一割も伝えられていないだろうから、その一割にさえ興味をもって頂けているなら、きっとこの本を楽しめる。そう思います。

 

それでは最後までお付き合い頂きありがとうございました!!